
カルティエ現代美術財団と森美術館の共展で
パリ・ミラノ・ソウルに続く巡回展が
東京にやってきたという事で、早速足を運んでまいりました。
ロン・ミュエクは超精巧な人体を、実寸の何倍も大きく、ときには小さく作り上げ
その物言わぬ表情やポーズのみで見る人々に訴えかける作品群を制作する現代アーティスト。
そのリアルさたるや、皮膚の赤みや透ける血管、肌の柔らかみまで触らずとも
全て伝わってくるようなレベル。
それだけ精巧な人体、質感なのに実寸は違う。(作品によっては足だけ大きかったりとか)
何か異様な存在に思えて体が無意識に少し慄くというか
ロン・ミュエクのアートの不気味な魅力を感じ取った。
作者のロン・ミュエクは、これだけ著名なアーティストにも関わらず
本人はメディアにはほぼ登場しないし、作品についても全く語らない
「観る側と作品との間に作者は入る必要はない」という、
どこまでもアートに誠実なその姿勢にもとても憧がれてしまう。

こちらの「インベッド」は実寸の4、5倍はあるだろう巨大な女性がベッドに横たわっている。
何かに思いを馳せているのか、視線はどこを見ているか分からない。
このどこにでもある様な風景が、超リアルに、巨大なサイズで目の前にあるだけでなのだが
体が一瞬すくんだ感覚がした。今まで感じた事のない感覚だった。
その感覚を楽しみつつ、細部にまで目をやると
肌のテクスチャや柔らかさ、毛のリアルさに感嘆する。
そうしている内に、この女性の生活風景や性格までも見えて来てしまう気がする所が
ロン・ミュエクの凄さなのかなと思ったり。
今回一番好きだった作品は「ダーク・プレイス」。
写真は用意できなかったのですが真っ暗なボックスの奥に
実寸の10倍近くは有るであろう大きな男性の顔面が配置されていて
その暗いボックスに立ち入ると
外からの光は完全に視界から消えて
薄くライトアップされたその巨大な男性の顔のみが目に映る。
一瞬で別世界に降り立ち、より一層不気味に映る男性と「1対1」で対峙するはめに。
本当に不思議で、不気味で、でもなぜか何処か心落ち着くような…..
今までに無いなんとも形容し難い体験を得た。
これほどシンプルに、かつ深淵を覗かせてくれる作品に
僕はまた心から感嘆・・・
そして最後に観覧者を待ち受けているのは目玉の展示「マス」

これはもう、なんというか圧巻
広い展示室一面に巨大な頭蓋骨が転がり、積み上がり
頭蓋骨の側を通る度、「死」について嫌が応にも思いを馳せてしまう
とても破壊力のある展示である。
と同時に、展示していない時は何処にこれだけの頭蓋骨を保管しているんだろうなどと
無駄なことも考えてしまった。
今回、実は僕的に何気に嬉しかったのは
ロン・ミュエクのアトリエでの制作風景を動画にしたショートムービーも公開されていて
淡々と進むその映像に、技術と時間、手間・・
一つの作品が出来上がるまでの過程が映し出される。
いかにしてこの作品が作られているかにとても興味があった僕にとってはまさに最高の機会、
1時間ほどの長さの動画を食い入るように見納めた。
心にずっしりと残る、得るものの多い
最高のアート体験を楽しむ事が出来た。