前回のコラムではエリザベス期〜ビクトリア期、そして1940年代までの
メイクアップの移り変わりを振り返りました。
世界の歴史を背景に、多様なスタイルへと姿を変えてきました。
今回は前回の続き、1950年代〜2000年代までの流れを見てゆきましょう。

もし前回のコラムをまだ未読の方は
こちらもあわせて読んで頂ければより理解が深まると思います。

1950年代以降の流れ

1950年代  銀幕スター達の台頭

40年代の第二次世界大戦は世界を失望と混乱に陥れました。
ですが1945年に大戦は集結を迎え、その後1950年代へと突入します。

前回の記事で、混乱を極めた1940年代の後はどの様な時代が来るか
クイズ形式で締めくくりました。
正解はそうです、暗い時代の後は明るい時代がやってくる。
1950年代は華やかで勢いのある時代へと突入します。 

物資も豊富になって多種多様な商品が流通し始めました。
この頃から10代の女性もメイクアップ市場に参戦
女性の身だしなみとして、メイクアップが定着し始めます。

マリリン・モンローやオードリー・ヘップバーン、グレイス・ケリーなどの
今でも人気の衰えないスーパー女優(語彙w)たちが活躍した時代です。

Audrey Hepburn as Princess Ann in Roman Holiday by Bud Fraker, 1953.
Marilyn Monroe in 1953 as she appears on
December 1953 issue of Photoplay magazine.

1940年代は少量のパウダーのみでベースを作り上げていましたが
1950年代はクリームファンデーションでしっかりカバー。
眉は柔らかく、太めのアーチ型
チークやリップの色味は赤だけでなくオレンジやピンクなど
彩度の高い色も好まれた様です。
まつげもしっかりと存在感を出すように、すでに60年代に通ずるものを感じますね。

また自分的に大きな特徴はアイラインです。
今まではアイシャドウの補助としてのアイラインというイメージでしたが
この時代は逆で、アイラインがメインで補助にアイシャドウ
という目元が特徴的です。

Grace Kelly グレース・ケリー

ですのでこの時代のメイクを再現する際に
シャドウよりもアイラインを主役気味にするバランスを
チークやリップにオレンジやピンクなど明るい色味
太めアーチ型の眉を意識すると雰囲気が出しやすいと思います。
とても可愛いおすすめのスタイルですよ!

余談ですが、テレビもこの時代から一般社会へと普及し始めます。

メイクポイントまとめ
  • 肌(ベース)はクリームファンデでしっかりカバー
  • 眉はふんわりとした太めのアーチ型
  • チークはほぼニュアンス程度
  • 目のメインはアイライナーとマスカラ。シャドウは補助的に
  • リップは上唇をややオーバーラップ気味で赤、ピンク、オレンジなどの明るい色味

EBARA

それにしてもオードリー・ヘップバーン・・・
今見ても絶世の美人、可愛すぎますね・・・

1960年代 カラフルポップ & ハイファッション

この年代はファッションの一つのピークだと思っております。

前期の50年代の流れを踏襲しながらも
60年代前半は1920年代のクラッシクなルックが好まれる原点回帰的な流れがありました。
ですが後半にはいり、好景気によって生活に余裕の出来た若者達が
それぞれのスタイルや価値観を全面に押し出し様々なカルチャーが生まれました。

この若者のカルチャーから生まれたスタイルは
現在でも人気を集めています。
とりわけ、「モッズ(MODs)」はロンドンのハイセンスな若者達から生まれた
現代も愛される人気のスタイルです。
イタリア製のスタイリッシュな単車ベスパに乗り
細身でシックな色合いのスーツにブーツ、リミタリーコートなど、
一見合わなさそうな二つのスタイルを融合させ着こなしました。

この様な既存の価値観に対するアンチテーゼの様な文化は
後の「パンク・ロック」の礎となり引き継がれます。

メイクに関しても
そんな若者の文化に触発される様に、今までにない新しいアプローチが
次々と発案されました。

当時のアイコンとしてよく取り上げられるのはモデルのツイッギー

こちらの「ダブルライン」と呼ばれる、まぶたの窪みに入れるラインメイクも
「モッズ」の特徴の一つである「白と黒」「幾何学模様」から
インスピレーションを受けたデザインだそうです。

ビートルズがデビューしたのもこの年代です。
モッズとは少し流派は違うそうですが、スーツ姿にマッシュルームカットが
当時の若者達に大きな影響を与えました。

The Beatles Hötorgscity, Stockholm 1963 By ingen uppgift – Scanpix
wikimedia commons

メイクの特徴としては
基本ナチュラルなマットベースに
パステル調のカラフルなアイシャドウに存在感のある太めのアイライナー
マスカラもしっかりと、時にはつけまつげも使用して
目元を中心に見せるメイクスタイル。
その分、チークはニュアンス程度で
リップは淡い色合い、パステルピンクなどがおしゃれ最先端でした。

下の画像は、当時のレブロンの広告です。

こちらは当時のVOGUEの表紙ですね。
こんな斬新でポップなメイクも60年代ならではですよね。

メイクポイントまとめ
  • 肌(ベース)はナチュラルでマット系
  • 眉は輪郭をしっかり目に描く。太さ、形は自由。
  • チークはほぼニュアンス程度
  • 目のメインはアイライナーとアイシャドウ(パステルなど)、まつげにも存在感
  • リップは淡い色味、パステルピンクやオレンジなど。

EBARA

60年代のニュアンスを取り入れる事で
レトロ感も相まってとてもオシャレな雰囲気を
醸し出してくれるのでとても重宝します。

1970年代 「ヒッピー」 と 「パンク」 と 「ノスタルジア」

この時代のメイクは、60年代と打って変わって
女性達はナチュラルへ舵を切ります。
その要因にベトナム戦争があり、繰り返される戦争に疲れ果てた人々が
自然回帰への思想を持つきっかけとなりました。
「ヒッピー」と呼ばれるスタイルですね。


また女性の社会的独立を目指した「女性解放運動」も本格化しました。
彼女達はメイクとは「古い男性中心の価値観が女性に強いたもの」
と位置付け、ありのままで生きる事を望みました。


また一方では過去のスタイルをもう一度慈しむ「ノスタルジア」という
流れが起き、1920年代の雰囲気にインスピレーションを受けた
「華麗なるギャッツビー」など映画がヒットしました。
この時代は超ナチュラル主義から過去のリバイバルメイクまで
幅広いスタイルが存在しました。

グレー系のアイシャドウに細眉、
濃いリップの色味が1920年代を感じさせますね。
流石に肌までは白くしなかった様ですが。

そしてもう一つ、忘れてはいけないカルチャー
「パンク」の誕生した年代でもあります。
音楽シーンから生まれたこのスタイルは「反抗」を軸に
独特で唯一無二のファッション、ヘアメイクスタイルを確立してゆきます。

いやぁ、すごいですよね。 まさに「反抗」。
この個性の塊の様なスタイルは今でも最高のリファレンスとして
クリエイター達に愛されています。

またこの時代、新しいスタイルのミュージシャンも活躍します。

写真はデビット・ボウイです。
無骨で男臭い王道ロック(僕は好きですが!)に対抗し
グラマラスで煌びやかなステージを演出する
「グラムロック」という新しいジャンルを確立しました。
奇抜なメイクと衣装でステージに立ち、人気を博します。
日本の洋服デザイナーの高田建造(KENZO)の衣装もステージに登場しました。

数々の新しいスタイルが生まれた時代ですが
社会的な話でもう一つ、大きな出来事として
オイルショックがあります。
原油価格が高騰し、世界中が不況で苦しみました。

こうして見ると、70年代はやや混乱の時代だった様に思います。
当時の人々は時代の激流の中、自分のスタイルを見つけ
貫いたのでしょう。

メイクポイントまとめ
  • 肌はナチュラル、厚塗り感はなく、ヘルシーな艶肌が好まれた
  • チークもナチュラル。日焼けした健康的な肌を演出するためにブラウンカラーのチークが使われ始めた。
  • アイライナーはラインを残さずグラデーションで柔らかく見せるスタイルが主流。
  • リップも60年代とは違って赤や紫、ダークベージュなど落ち着いた色味が人気。
    リップグロスがナチュラルなメイクにとてもマッチして高い人気を誇った。
  • 同時に、パンクやグラムロックなどで個性豊かなヘアメイクが登場した。

1980年代 クールに激しく、挑戦あるのみ

オイルショックからまだ立ち直ることができず、世界的な不況は続いていましたが
70年代の混沌に反抗するかの様に、80年代は力強く勢いに溢れている時代に思えます。
この時代は常に新しいスタイルに挑戦していた時代でした。 

その甲斐あって、この時代のスタイルは最高のインスピレーションの源として
今でもその魅力は衰えません。

ポップの女王マドンナも攻め攻めのメイクですね。

多色使いのアイシャドウ、強いチークカラー、少しオーバーめ赤いのリップ
眉毛も太くしっかりと、まさに盛り盛りの内容・・・!

この年代のモデル、女優のメイクもやはり強めです。
ハリウッド女優のブッルク・シールズです。

80年代の雰囲気がよく分かるヘアメイクですね。
下の写真は洋服も交えた一枚ですが

ヘアもメイクも衣装も、存在感が他の年代の比ではない感じですよね。
次はまた有名ミュージシャンですが・・・

シンディー・ローパーです。名曲「Time After Time」のシンガーです。
遊び心の効いたアシンメトリーのアイシャドウ。

こちらはニーナ・ハーゲンです。
もう凄すぎて時代を超越してますね。

そしてもう一人、忘れてはいけない人、
ボーイ・ジョージです。

彼がボーカルを勤めたバンド、「カルチャークラブ」は
メイク、ヘア、衣装など性別にとらわれることなく
思いのままのスタイルで活動し、多くの若者の支持を得ました。
70年代のグラムロックの流れを引き継いだスタイルですね。

全体を通して、基本足し算というイメージ。
クリエイティブなメイクが好きな方は
この80年代のメイクデザインはインスピレーションの塊なので
とても参考になると思います。

メイクポイントまとめ
  • 肌はマット系、ファンデーションでしっかりとカバーして色味を均一にし、パウダーで抑える。
  • 目元ははっきりとした色味のアイシャドー。ラメなどもアクセントとして効果的。
    目の周りは黒で締め、マスカラもしっかりと。
  • 彩度の高いネオンカラーは80年代を表現するのに大活躍します。
  • チークは濃くハッキリと。斜めに上がってゆくクールなラインもよく使われた。
  • リップははっきりとした色味を少し大きめにしてふっくらと、目を強調するためにベージュもあり。

EBARA

僕は70年代、80年代が大好きです。
自身の作品に多大な影響を受けている事は
僕の過去作を見れば一目瞭然ですがw

1990年代 「グランジ」 と 「スーパーモデル」

90年代に入ると、アメリカとソ連の冷戦が終了。
大国の抑止力がなくなった為各地で内乱や紛争が多発
アメリカが介入し湾岸戦争が勃発した時代です。

世界ではインターネットの一般利用が始まり
アメリカではIT産業の成長で経済が安定しました。

逆に日本はバブルが崩壊して大手金融企業、商社などが倒産
以降、現在まで続く長い不況が始まります。

そんな90年代は80年代の大胆で華やかな情熱を引き継ぎながらも
ミニマムにポイントをまとめた様なスタイルです。
またこの時代に人気を博したモデル達がスーパーモデルと呼ばれ
ファッション雑誌やランウェイを華やかに飾りました。

そんな90年代の代表的なスタイルを紹介すると
まずは「グランジ」

「グランジ」はロックバンドのニルヴァーナの登場により
新たに生まれたスタイルの一つ。
内向的で、少し危ない雰囲気の新しいロックは
オルタナティブ・ロックと呼ばれ人気を博しました。
黒のシャドウで目を黒く囲み、特に下側にもしっかりと入れる事で
強さと危なさを表現したこのメイクは
90年代の代表的なスタイルの一つです。

もう一つは「ブラウンリップ」

こちらはスーパーモデルの一人、シンディ・クロフォードです。
レンガの様なブラウン系リップの上品な雰囲気が人気を集めました。

またアイシャドウにフロスト、シマー系の質感がよく使用されました。

写真はブリトニースピアーズですね。
水色や紫など、寒色系が好んで使われていた様です。 
チークもしっかりと入れるのが90年代風ですね。

こちらはスーパーモデルの一人、リンダ・エヴァンジェリスタです。
90年代の眉毛は細めだけどもアウトラインはしっかりと書くイメージですね。

この時代、日本こそバブル崩壊で目も当てられない状況でしたが
アメリカはTIバブル、ヨーロッパはEUの始動で好景気を迎えていました。
比較的安定した状況の中で、80年代の爆発的な勢いが
ここで洗練されたように思えます。

メイクポイントまとめ
  • 肌は80年代と同じくマット系、ファンデーションでしっかりとカバーしてパウダーで抑える。
  • 目元は黒で目を囲むグランジと、シルバーや光沢感のある寒色系などフロストシャドウが特徴。
  • 眉は細めで、アウトラインをしっかりと感じさせるアーチ型。
  • チークは濃いめでハッキリと。
  • リップはすこしオーバーに塗ったブラウンが人気だった。

2000年代 インターネット時代の到来 スタイルの多様化

ついに2000年代突入しましたね。
ミレニアム問題など、もはや懐かしいですが
現時点でもう20年以上前の出来事かと思うと
時が経つ早さを改めて実感します(怖)。 

この時期はまず2001年にアメリカで同時多発テロが起きました。
あのショッキングな映像はまだ記憶に鮮明に焼き付いています。
この事件を機にファッションはH&M、ZARA、やユニクロなどの
ファスト・ファッションへと傾倒し始めます。

この頃から、ベースの質感がマット肌から艶肌へと変わり始めます。
ファンデーションの使用量を減らし、ライトなベースを好む人が増え始めます。
個人的には大きな転換期の1つだと思っております。

もう一つはハイライトの効いたパール系のアイシャドウです。

パールの入ったブリーやパープル系のアイシャドウに
さらにホワイトのパールでハイライトを強調する目元が人気でした。
また90年代の目元を黒で囲むスタイルも引き続き取り入れられました。

こちらの写真は米国歌手のクリスティーナ・アギレラです。
肌の艶感が2000年代を感じますね。(これまではマットが主流)
ほんのり入ったピンクで血色感をアップするチークもこの年代で人気でした。

また、もう一つのトレンドとしてリップグロスがあります。

写真は歌手のリアーナです。
リップブロスで艶をプラスしたジューシーなリップをアクセントにしました。

メイクポイントまとめ
  • 肌はこの時代を機に艶肌へと傾倒してゆく。
  • 目元はグランジ程ではないが、黒で目を囲む。
    パール系のブルーやパープルにホワイトパールでハイライトを強調。
  • 眉は細めで、アウトラインをしっかりと感じさせるアーチ型。色は90年代よりも少し明るめ。
  • チークはピンク、コーラルをニュアンスで入れて血色感をアップ。
  • リップはグロスが人気を集める。レンガ色も引き続き人気だった。


2000年以降、メイクアップはファッションや世界の情勢に影響を受けず
独自のレールに沿って進み始めた、転換期を迎えたと思っています。

これまでは雑誌や新聞などが主な情報の発信源で
受動的な形の情報がメインだったのですが
インターネットやSNSが普及が加速し
人々は自ら欲しい情報を能動的に、ほぼ無限に手に入れられる様になりました。
それにより独自のスタイルを追求し自ら発信することも可能になったことで
流行のサイクルが早くなり、大きな流れは昔よりも発生しにくくなったと思っています。

この時代の終わり頃にはリーマンショックが起き
世界的な不況が訪れ、同時多発テロで下火になったファッションはさらに
「ミニマム」「リアリスティック」な流れに向かいますが
メイクに関してはそれほど影響は受けずに
いまや豊富で多種多様なメイクプロダクトを
各々がそれぞれ、自身の好きなスタイルで楽しむ
新しい時代に突入したように感じています。

終わりに・・・

大変長くなってしまいましたが・・・!
いかがだったでしょうか?

年代ごとにメイクだけ覚えてもすぐに忘れてしまったり
そもそも全て覚える事自体、意外に難かったり・・・
まさに僕がそうだったのですが
ですので、年代を思い浮かべた時に頭にスッとイメージが湧く様にと
時代背景と結びつけて覚える様にしました。

メイクだけでなく、その時代についての知識があると
再現時にもリアルさが加わってクオリティが増しますし
アレンジする際も、外してはいけないポイントが分かるので
とても実用的だと思い、紹介させていただきました。

皆さんのメイクの引き出しが増えると幸いです。