この記事では、メイクの歴史について触れてみようと思います。

過去から現在まで、メイクの移り変わりのを把握しておくと
アイデアの引き出しが増えると同時に
多方面から一つの作品を捉える事が出来ます。

メイクのリファレンスとしてよく参照されるのは
エリザベス期に始まり、ビクトリア期を経て1900年代以降の
10年刻みにまとめたスタイルで
作りたいビジュアルのイメージソースとしてよく登場するので
その辺りまで遡って紹介します。

ヴィクトリア時代のメイクアイテム
Ben Sutherland  https://www.flickr.com/photos/bensutherland/37299740615

まず、歴史を振り返る前に・・・

歴史を知る利点

もちろん知識として知っておく事ですでに利益はあるのですが
メイクに限らず、過去の人間がいかにして生き抜いてきたかの歴史を知っていると
色々と物事を有利に進める事が出来ると思っております。

その理由は未来に何が起きるかを、過去の資料から予測できるようになるからです。

メイクやファッションにおいては過去の資料から次の流れを予測し
流行りを先取りする事が出来るようになります。

当時の世界情勢に大きく左右される

エリザベス期やビクトリア期は安定した時代で
短期間での大きな変化はあまり起きませんでしたが

産業革命を経て、1900年代からなる現代は
世界情勢が目まぐるしく変化する時代に入ります。

それに伴い、流行のサイクルも早くなり多種多様なスタイルが生み出されました。

メイクやファッションは経済の好景気や不況
戦争などの出来事に沿った形で変化してく印象です。

メイクの歴史を覚える際に、世界情勢も一緒に確認しておくと
理解しやすいと思います。

EBARA

では早速、メイクの歴史を辿って見ましょう!

メイクの歴史

エリザベス朝 (1600年 〜) エリザベス1世

この時代はとにかく白くて厚化粧が特徴です。

顔を真っ白に塗り、額や眉毛もできるだけ剃り上げて
おでこを広くし(知性の象徴だったと言われています。)
その上に濃い赤のチークやリップをかさねる豪華なスタイルが流行りました。

「ヴァージン・クイーン」の名をもつエリザベス女王の
権威と永遠の若さの追求の果てに生まれたメイクで
当時の美の象徴とされた様です。

ただ当時の化粧品の質を考えると、肌のベースはものすごいことになってたのだろうなと
想像してしまいます。

Scanned from the book The National Portrait Gallery
History of the Kings and Queens of England by David Williamson.
エリザベス女

また「ホワイトニング」と呼ばれた白粉は有害性が高く
鉛中毒によって肌は荒れ、健康を害したとのことです。

ケイト・ブランシェット主演の映画「エリザベス」で
当時の衣装、ヘアメイクが再現されています。
興味のある方はぜひご覧ください。

メイクポイントまとめ
  • 肌(ベース)は厚塗りの白
  • 眉や生え際の産毛を全剃りしておでこ広く
  • チークに存在感(赤系)
  • リップにも赤

ビクトリア朝 (1850年頃〜1900年頃)

ビクトリア朝は19世紀後半(1850〜1900)頃

ビクトリア王女の元イギリスが繁栄を極め他国にも
大きな影響を及ぼした時代です。貴族の女性はコルセットで腰を締め
大きなスカートに装飾を散りばめたドレス
花をあしらった帽子にアクセサリーと、豪華絢爛な衣装を身につけていました。

ウィリアム・パウエル・フリス(William Powell Frith)作 1883

ビクトリア朝はファッションの現場では今でも
度々イメージソースとしてオマージュされる
人気のある時代です。

Detail of 1871 portrait painting of Laura Thistlethwayte by Richard Buckner

この頃のメイクはというと
化粧は姿を偽るという観点から
女性が使用することを当時の社会は良しとはしませんでした。

女性達はスキンケアで肌を美しく見せる工夫をしていた様です。

ベースはできる限り青白く、頬と口紅は血色良く見える様に少量の紅をさし
目元は少量のブラウンシャドウ
瞼のハイライトにワセリンなどで艶と潤いを足して
清潔さを演出していた様です。

今でも通用しそうな、品の良いメイクですよね!

可憐で清楚、かつ儚げのあるイメージが美しいとされていた様で
流行りというよりは「淑女」としてのマナーといった意味合いで
決まったパターンのメイクの中でアレンジを楽しんでいたようです。

メイクポイントまとめ
  • 肌(ベース)はスキンケアで美しく保つ。
  • 眉はナチュラル
  • 目元は少しブラウンで締めて、まぶたにワセリン
  • リップは健康的な血色感

1910年代 第一次世界大戦

この時期の大きな社会的出来事は流行り第一次世界大戦(1914年)です。

その不穏な社会情勢を汲み取ったかの様に
メイクはよりナチュラルなベースへ変化してゆきます。

ファンデは使わないで薄くパウダーを叩くのみ
目元もナチュラルでワセリンで光沢を出すなど
シンプルでナチュラルなメイクが主流でした。

肌の白さはそのまま引き継がれ、か弱さ、繊細さ、病的なイメージを美しさ基本とし
肌を青白く保つために外出時は日光を徹底的に避けたそうです。

Birgit Brånvall
Mode. Hattar. Modeplansch från 1911.

戦争が進むにつれて贅沢や派手さは敬遠され
シンプルでナチュラルなものが尊ばれるようになりました。

ドイツ革命 キール
Bundesarchiv, Bild 183-R72520

大戦は1918年にドイツの降伏で集結
平和が戻った世界はまた大きく動き始めます。

メイクポイントまとめ
  • 肌(ベース)はよりナチュラルに、でも日焼けは避けて白さはキープ
  • 眉はやや太め、しっかりめに
  • 目元はまぶたにワセリンのみでシンプルに
  • リップは血色を良くする程度

1920年代 ハリウッドの女優たち

第一次世界大戦の反省から「国際連盟」が発足。

大戦で潤ったアメリカ経済は潤い、経済の中心はロンドンからNYへ移ります。
アメリカは「黄金の20年」と呼ばれ大繁盛期を迎えます。

ハリウッドで良質な映画が作られる様になり
その女優たちがファッションの流行を担う様になりました。

Clara Bow Harold Dean Carsey (1886-1947) 

この時代のメイクの特徴として
戦時中の控えめなイメージから一転
映画女優たちのグラマラスなルックが主流となります。

ですが、「か弱く繊細」なイメージは引き続き継承されてベースは白くてマットな質感
アイシャドウはスモーキーブラックで目尻を下げて「タレ目」に
眉毛も細くハの字に描く。

唇は「キューピット・ボウ」と呼ばれる独特のスタイルの濃い赤で締める。

また「フラッパーガールズ」と呼ばれる、既存の家庭的な女性像に
反旗を翻しジャズクラブやバーで飲み歩くオシャレ最先端の
若い女性達も登場しました。

後の1970年代、イギリスで登場するパンクの様な精神を
すでにこの頃の女性が実現していた事に驚きですね。

フラッパー女優の一人 ルイーズ・ブルックス 
Bain News Service, publisher.

この時代のメイクは現代のファションメイクの定番の一つで
僕も大好きなスタイルの一つです。

映画「華麗なるギャッツビー」ではこの時代のフラッパーガールズの衣装を
PRADAとMIU MIUが制作担当し、煌びやかなパーティー風景が再現されています。
興味のある方は必見です!


当時は映画用のメイクプロダクトが存在せず
当時のメイクアップアーティスト、「マックス・ファクター」が
自身で新しいプロダクトを開発、一般の女性にも売り出します。
当時の代名詞のリップ「キューピット・ボウ」も彼の提案だったそうです。

文字通り、「華麗」な時代が訪れました。
歴史的な流れで一つ言及すると
禁欲の時代が終わったあとは必ず勢いのある派手な時代が訪れます。

メイクポイントまとめ
  • 肌(ベース)は白い滑らかなマットベース
  • 眉は細く、少し垂れ下がった様なライン
  • 目元は濃い色味でスモーキーアイ
  • チークはしっかり目に入れてアクセントに
  • リップは赤やボルドーなど。「キューピット・ボウ」も特徴の一つ

1930年代 一般社会へのメイクの浸透

化粧品が比較的安価に手に入れる事ができる様になった事で
女性のメイクアップが社会的にも浸透し、本格的に大衆化していった時代です。

また色白のベースメイクから脱却し、肌は本来の自然な色が好まれる様になります。
現代のメイクの原型がこのあたりの時期からスタートします。
新しいタイプの化粧品が次々と開発され、飛ぶ様に売れたそうです。

Film poster for ”Behind the Make-Up” (1930)
Greta Garbo, John Gilbert in Flesh and the Devil (1926)
Directed by Clarence Brown

メイクは自然な色味のマット肌に
細くてしっかりとしたラインの眉です。
新しいタイプのマスカラが発売されたことも相まって
長くて存在感のあるまつ毛も特徴的です。

またハート型チークも流行りで
やや外側にチークの芯を持ってくる事で
この時代の雰囲気をより再現しやすくなります。

出典 Hair & Makeup Artist Handbook
https://hair-and-makeup-artist.com

ちなみに、こちらの画像をお借りした”Hair & Makeup Artist Handbook“では
その時代のイラストや写真が多数掲載されていてとても参考になります。
興味のある方はぜひ訪れてみてください。
英語表記ですが、写真を見るだけでもかなり当時の雰囲気が掴めると思います。

メイクポイントまとめ
  • 肌(ベース)はナチュラルな肌色、パウダーを使用したマット系
  • 眉はやや細めで、少し高めのアーチ型
  • チークは控えめに
  • 目元はブラウン、ブラックで奥行きをプラス。長いまつげ、マスカラがポイント
  • リップははっきりした色味でアウトラインを楽しむ

1940年代 第二次世界大戦 「ビクトリーレッド」

この時代、第二次世界大戦が勃発。
戦争によって物資は不足し、次第に化粧品を製造する原料も
確保する事が困難になってきます。

それでも女性達はあらゆる手段を用いてメイクを楽しもうとしたそうです。


しかし如何せん、化粧品自体が手に入らないこともあって。
時代を通して見るとこの時期は結果的にとてもナチュラルなイメージに落ち着きます。

Gene Tierney ジーン・ティアニー
Gene tierney Modern Screen, Jan. 1947

ですがこの時代、戦争の士気高揚を目指し
政府が女性に赤いリップを使用する事を推奨しました。

結果、この時代はスーパーナチュラルなルックに
赤いふっくらとしたリップが特徴となりました。

メイクポイントまとめ
  • 肌(ベース)はナチュラルな肌色、質感もナチュラル
  • 眉は自然に整える程度
  • チークは無しか、ほんのり血色を足す程度
  • リップは赤系で少しオーバー気味に描く

如何でしたか?

メイクの歴史も、史実と重ね合わせると
その変化に理由があり、「なるほどなぁ」と思えますよね。

世界が混沌に包まれた後、華やかで派手な時代がやってくる・・・
1940年は第二次世界大戦の影響でとても禁欲なスタイルでした。

では1950年はどんなメイクが流行ったのでしょう・・?
今までの流れを意識してみれば、おおよその検討はつきますよね?!

EBARA

次の記事では、1950年代から現代まで
解説してゆきたいと思います!