精密な写実の中に、時間が止まったかのような独特の世界観を醸し出す
アンドリュー・ワイエスの絵画。
僕は油絵も描くのですが、テーマや画風、何のために描くのかは
今だに自分の中でも定められず、通っている絵画教室の先生のお勧めもあって
ワイエスの作品に触れてその燐篇を吸収出来ればと思い
東京都美術館へ足を運びました。
今回はそんな僕の体験記です。
まず、アンドリュー・ワイエスとは何者か、という事ですが、
アメリカのペンシルバニア州のフィラデルフィア生まれ
父は当時すでに著名だった絵本の挿絵作家、兄弟姉妹も画家、作曲家など
絵に描いたような芸術一家で育ちました。
本人は病弱なため学校へは行かずに近所を散歩しては
気になった風景の水彩画を描くような少年時代を過ごしたそうです。
しかし父親が交通事故で急死と遂げる。 尊敬する偉大な父との突然の死別は
当時のワイエスの心に大きな爪痕を残します。
ワイエスの生と死を行き来するかの様な世界観は、このような少年期の経験が元になっていると言われています。
彼が画家として活動した時代は同時期に、ヨーロッパから新しいスタイルが多数
アメリカに上陸し、程なくしてそちらが前衛アートとして主流となります。
しかしその大きな変化の中で、ワイエスは時代遅れとな画家だと位置付けられるも
自分を曲げる事なく一貫して同じテーマを描き続け
普遍的な価値を宿した作品をこの世に多数残すことになります。
その製作姿勢もとても勉強になりました。
絵画一枚で魅せる唯一無二の世界は、絵画の奥深さと可能性を改めて僕に教えてくてました。
恥ずかしながら僕はワイエスは水彩画と油絵を使った作品群だと思っておりました。
実際は水彩画とテンペラ画がメインで、水彩に関してはドライブラシという
またテンペラ同様に手間と時間のかかる技法を好んだようです。
でも、少しづつ織り込んだその水彩画の迫力がすごい、本当にすごい。
こんな濃密な水彩画は初めて見ました。
作品説明を見ないと、テンペラか水彩かわからないレベルで
「え、水彩ってこんなに細部まで描けるの??」という感動を超えた衝撃を何度も味わいました。
テンペラも同じく、本当に一本一本の線を重ねて作るまさに織物絵画。
その執念と気迫に圧倒されっぱなしでした。
作品に対する愛、そして対象ととことん向き合う事の大切さを教えて貰えたら、とても収穫の多い展覧会でした。